PRISM — R : Resilience
レジリエンスとは?変化の時代に,何度でも立ち直る力
1. レジリエンスとは何か
レジリエンス(resilience)はもともと物理学の用語で,力を加えられて変形した物体がもとの形に戻る性質を指していました。心理学ではこれを転用し,逆境・ストレス・喪失・大きな変化を経験したあとに,機能を回復し,適応していく過程を意味します。
誤解されやすいのは,レジリエンスが「傷つかないこと」だと思われている点です。研究で観察されているのはむしろ逆で,レジリエンスの高い人もはっきり落ち込みます。違いは落ち込みの深さではなく,そこにとどまる長さにあります。
- レジリエンス=逆境から回復し,適応する力
- 「感じない力」ではなく「戻る力」
- 固定的な性格ではなく,訓練で変化するスキル
- 中核にあるのは認知的敏捷性
2. なぜ今,レジリエンスが必要なのか
職務の内容が数年単位で書き換わり,同僚も取引先も入れ替わる環境では,人は「うまくいかない期間」を以前より頻繁に経験します。新しいツール,新しい役割,新しいチーム。そのたびに一時的に無能に戻る感覚を味わいます。
ここで効いてくるのが回復の速さです。同じ挫折を経験しても,3日で立ち上がる人と3か月かかる人では,1年間に挑戦できる回数が変わります。変化の速い環境では,能力の差より回復の速さの差が積み上がっていきます。
3. レジリエンスを構成する4つの要素
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 認知的敏捷性 | 出来事の解釈をひとつに固定せず,別の見方に切り替えられる。レジリエンスの中核。 |
| 自己効力感 | 「自分はこれをやれる」という見込み。行動を始め,続ける力を支える。 |
| セルフ・コンパッション | 失敗した自分を責め続けず,友人に接するように扱う。反すうを止める働きがある。 |
| ソーシャルコネクト | 頼れる相手がいること。個人の資質より効果が大きい場合がある。 |
4. レジリエンスを高める方法
① 出来事と解釈を分けて書き出す
落ち込んだとき,「何が起きたか(出来事)」「自分は何を思ったか(思い込み)」「その結果どうなったか」を分けて書きます。書くだけで,事実と解釈が混ざっていたことに気づきます。
② 思い込みに反証を1つ足す
「もう終わりだ」「自分には向いていない」といった結論に対し,それに反する事実をひとつだけ探します。反対の結論を出す必要はありません。断定を仮説に戻すことが目的です。
③ 回復の型をあらかじめ決めておく
落ち込んでから何をするか考えるのは難しいので,元気なうちに決めておきます。散歩,連絡する相手,寝る時間。判断力が落ちているときほど,事前に決めた手順が効きます。
④ 頼る練習をしておく
ソーシャルコネクトは,必要になってから作れません。困っていない時期に小さく頼っておくことが,後の回復速度を左右します。
5. 仕事での具体例
たとえば,時間をかけた提案が却下されたとします。多くの場合,最初に浮かぶのは「自分の力不足だ」という説明です。これは個人的・永続的・全体的な解釈で,回復をもっとも遅らせる型として知られています。
ここで「今回の提案の,どの部分が通らなかったのか」と範囲を限定すると,同じ出来事が次の行動に変わります。感情を打ち消すのではなく,解釈の範囲を正確にすることがレジリエンスの実務です。
本書ではどう説明されているか
『これからの生き方』では,レジリエンスをPRISMの「R」として位置づけ,変化の時代に繁栄するための土台のひとつとして扱っています。とくに,認知的敏捷性を鍛えることで回復が速くなるという実証的な知見が中心に置かれています。
6. よくある質問
レジリエンスは生まれつき決まっていますか?
レジリエンスと「メンタルが強い」は同じですか?
レジリエンスと自己効力感の違いは何ですか?
どれくらいで効果が出ますか?
7. 出典・参考文献
- Kellerman, G. R., & Seligman, M. E. P. Tomorrowmind/日本語版『これからの生き方』(徳吉陽河 監訳)
- 説明スタイルとレジリエンスに関する研究群(学習性楽観主義/ペンシルベニア・レジリエンス・プログラム)
- セルフ・コンパッションと反すうに関する研究
- ※ 本記事は自己理解のための情報であり,医学的な診断・治療を目的とするものではありません。強い落ち込みが2週間以上続く場合は,専門機関へのご相談をおすすめします。