PRISM — P : Prospection
プロスペクションとは?未来を描く力の意味と高め方
1. プロスペクションの意味
人は過去を記憶する生きものであると同時に、先を思い描く生きものでもあります。むしろ、脳がもっとも多くの時間を費やしているのは、過去の想起よりも未来のシミュレーションだという見方があります。
興味深いのは、未来を思い描く働きが、記憶をつかさどる脳の領域と大きく重なっていることです。つまり未来を描くとは、過去の素材を組み替えて、まだない場面を構成する作業にほかなりません。だから経験の少ない領域では未来が描きにくく、逆に情報や体験が増えると、描ける未来の解像度が上がっていきます。
- 予測を当てることではなく、選択肢を並べること
- 未来を描く材料は、過去の経験と情報
- 解像度が上がるほど、いまの判断が具体的になる
2. なぜ今、プロスペクションが必要なのか
先が読めない環境では、「正解の道」を探そうとすると動けなくなります。何が起きるかわからないのだから、当然です。
ここで効いてくるのが、複数の未来を同時に持っておく力です。Aが起きたらこうする、Bが起きたらこうする。そう準備しておける人は、実際に何が起きても対応を始められます。逆に、ひとつの未来しか描いていない人は、それが外れた瞬間に立ち止まります。
不確実性そのものは減らせません。減らせるのは、不確実性に対する準備不足のほうです。
3. プロスペクションを高める方法
① 未来を「時間割」で書く
「もっと成長したい」ではなく、「3年後の平日の午前中に、どこで、誰と、何をしているか」まで書きます。抽象的な目標は行動に変換されませんが、時間割は今日の選択に直結します。
② うまくいった未来を、映像で思い浮かべる
寝る前の3分、明日いちばんうまくいく場面を1つだけ想像します。時間・場所・誰といるかまで具体的にするほど、脳は現実味を感じ取ります。
③ 3つのシナリオを持つ
最良・最悪・最もありそうな未来を、それぞれ3行ずつ書きます。最悪を書くことは悲観ではなく、備えです。書いた瞬間に、漠然とした不安が具体的な対処に変わります。
→ 実践:うまくいった10年後を、具体的に書く / → 研究では何がわかっているか
4. 未来が描けないときは
未来を思い描くには、実はある程度の心の余裕が必要です。目の前のことに手一杯なとき、先が見えなくなるのは自然な反応であって、能力の問題ではありません。
そういうときは、遠くを見ようとしないことです。遠くを見ようとするほど霧は濃くなりますが、1週間先なら意外とよく見えます。まず整えるとよいのは、未来のことではなく睡眠や休息といった足元のほうかもしれません。余裕が戻ってくると、未来は自然と視界に入ってきます。
5. 仕事での具体例
キャリアを考えるとき、多くの人は「どの職業を選ぶか」から入ります。しかし職業そのものの内容が数年で書き換わる環境では、この問いは足場になりません。
プロスペクションの視点では、問いはこう変わります。「5年後、自分はどんな問題を解いていたいか」。職業名ではなく、解きたい問題で未来を描くと、業界が変わっても持ち運べる軸ができます。
本書ではどう説明されているか
『これからの生き方』では、プロスペクションを第8章「プロスペクション(未来予想力)― 21世紀における超越した力」で扱っています。人間が未来を思い描く働きを、他の能力とは別格の位置づけで論じている章です。
よくある質問
プロスペクションと目標設定は同じですか?
未来を考えると不安になってしまいます。
どのくらい先を考えるのが適切ですか?
出典・参考文献
- Kellerman, G. R., & Seligman, M. E. P. (2023). Tomorrowmind. Atria Books.
- 日本語版『これからの生き方 揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』(徳吉陽河 監訳・解説)
- 徳吉陽河(2023). ポジティブ大全. 総合法令出版
- コーチング心理学ガイドブック. 北大路書房
- ※ 本記事は自己理解のための情報であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。