PRISM — 5つの力
PRISMとは?変化の時代に必要な5つの力を、心理学からわかりやすく解説
1. PRISMとは何か
一筋の白い光がプリズムを通ると、5つの色に分かれます。ひとりの人のなかにも、同じように複数の心の働きが同時に存在している。PRISMという名前には、そうした見立てが込められています。
この枠組みは、書籍『これからの生き方』(原著 Tomorrowmind)の中核にあるものです。著者のマーティン・セリグマンとガブリエラ・ローゼン・ケラーマンは、仕事の内容も、職業の寿命も、必要とされる能力も短い周期で組み替えられていく環境のなかで、人が消耗せずに力を発揮し続けるための条件を探りました。その答えが、この5つです。
P — プロスペクション
未来を思い描き、複数の可能性を比較して、いまの行動を選ぶ心の働き。
ResilienceR — レジリエンス
困難や変化に直面したときに適応し、そこから立ち直っていく力。認知的敏捷性と深く結びつく。
InnovationI — イノベーション
既存の要素を新しく結びつけ、まだない答えをつくり出す力。
Social SupportS — ソーシャルコネクト
短い時間でも信頼関係を築き、支え合えるつながりをつくる力。
MatteringM — マタリング
自分は誰かにとって意味のある存在だと感じられること。
2. なぜ「5つ」なのか
5つの力は、それぞれ独立した能力ではありません。互いに支え合う関係にあります。
未来を描く力があっても、思うようにいかないときに立ち直れなければ前へ進めません。立ち直る力があっても、支えてくれる人がいなければ回復には時間がかかります。新しい方法を思いついても、それに意味を感じられなければ実行までは至りません。どれかひとつが欠けると、他の力も働きにくくなる。だからこの5つは、セットで扱われます。
- P 未来を描けるから、いまの一歩を選べる
- R 立ち直れるから、何度でも挑戦できる
- I 創造できるから、前例のない状況に答えを出せる
- S つながれるから、ひとりで抱えずに済む
- M 意味を感じられるから、続けられる
3. なぜ、いまPRISMなのか
私たちの脳は、狩猟採集の時代に形づくられたまま、農業化・工業化を経て、いまテクノロジーによって加速度的に変わる環境に置かれています。脳の仕組みは劇的には変わりません。変わったのは環境のほうです。
とくにAIと自動化の進展によって、働く人は2種類の圧力を同時に受けています。ひとつは仕事そのものが置き換えられる圧力、もうひとつは変化の速さ(激流)に晒され続ける圧力です。どちらも、意志の強さでは対処できません。必要なのは、環境の変化に耐えるための心の使い方を意識的に育てることです。
4. PRISMは後から伸ばせるのか
伸ばせます。5つはいずれも固定された性格ではなく、練習と環境によって変わるスキルとして扱われています。
たとえばレジリエンスは、出来事の受け取り方(説明スタイル)を検証する練習によって、落ち込みからの回復が速くなることが報告されています。ソーシャルコネクトも、人づきあいの得意不得意ではなく、信頼を立ち上げる技術として扱われます。マタリングにいたっては、個人の努力よりも、貢献が本人に返ってくる仕組みがあるかどうかに大きく左右されます。
つまり、伸ばし方には2つの方向があります。ひとつは自分の習慣を変えること。もうひとつは、環境の側を変えることです。
5. 自分のPRISMを知る
5つのうち、いまどれをよく使っていて、どれを使う場面が少ないのか。それがわかると、次に何をすればよいかが具体的になります。
書籍の巻末には3つの心理尺度が収録されており、当サイトではそれらを無料で受けられるようにしています。読む前と読んだあとの2回受けると、変化が数字で見えます。
PRISM尺度(標準版)
全15問・約3分。5つの力の現在地をレーダーチャートで確認。
SELF CHECK組織におけるマタリング(重要感)尺度
全7問・約2分。職場での承認と達成感を測ります。
SELF CHECKVUCA自己効力感尺度
全4問・約1分。変化の激しい状況を乗り越えられる感覚。
よくある質問
PRISMとは何の略ですか?
PRISMの5つの力は、後から伸ばせますか?
どの力から取り組めばよいですか?
PRISMはどの本に書かれていますか?
出典・参考文献
- Kellerman, G. R., & Seligman, M. E. P. (2023). Tomorrowmind. Atria Books.
- 日本語版『これからの生き方 揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』(徳吉陽河 監訳・解説)
- 徳吉陽河(2023). ポジティブ大全. 総合法令出版
- コーチング心理学ガイドブック. 北大路書房
- ※ 本記事は自己理解のための情報であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。