Column — これからの人間関係
リモートワークで失われたもの、取り戻せるもの
ANSWERリモートワークで減ったのは会話の量ではなく、偶然の接触です。用件のある会話は残り、用件のない接触だけが消えました。ところが信頼の多くは、この用件のない部分で育っていました。取り戻すには、偶然を設計し直す必要があります。
1. 消えたのは「ついで」の時間
オフィスにいた頃、私たちは意識せずに大量の情報を受け取っていました。誰が忙しそうか、誰と誰が話しているか、あの案件がどうなっているか。会議で共有されたわけではないのに、なんとなく知っていた。
リモートでは、この層がまるごと消えます。残るのは、予定を立てて行う会話だけです。効率は上がりますが、関係の温度は上がりにくくなります。
2. 新しく入った人が、いちばん影響を受ける
すでに関係のある人同士は、蓄積があるので当面は保ちます。困るのは、新しく入った人です。頼れる相手を偶然見つける機会がないため、孤立が長引きます。
変化の多い環境では、チームの入れ替わりも頻繁に起きます。つまりこの問題は、一時的なものではなく、常に誰かに起きている状態になります。
3. 偶然を、意図的につくる
- 会議の冒頭3分を近況にあてる。アジェンダに書いておくと、雑談が業務として扱えます。
- 週に一度、音声だけで話す時間を持つ。画面を切ると、かえって話しやすくなることがあります。
- 作業中の画面を共有して、無言で一緒に作業する。会話がなくても、いる感覚は伝わります。
- チャットで「進んでいないこと」も書く。成果だけを共有する場では、困りごとが出てきません。
どれも小さな仕組みですが、偶然は放っておくと戻ってきません。設計しないと、消えたままになります。
4. 深さは、時間ではなく質問で決まる
関係を築こうとして会話の量を増やしても、距離はあまり縮まりません。効くのは質問の種類です。「何をしているか」ではなく「なぜそうしたか」を聞くと、その人にしか答えられない話が出てきます。
オンラインでは雑談が自然発生しないぶん、意図的な質問の効果が相対的に大きくなります。
よくある質問
出社に戻せば解決しますか?
偶然の接触は戻りますが、通勤時間や柔軟性は失われます。どちらか一方ではなく、リモートでも偶然が起きる設計を足すほうが現実的です。
雑談が苦手です。
雑談を長くする必要はありません。相手の話に一段深い質問を1つ返すだけで、関係の質は変わります。
チームに何を提案すればいいですか?
会議の冒頭3分を近況にあてる、という提案がもっとも通りやすく、効果も出やすい形です。
出典・参考文献
- Kellerman, G. R., & Seligman, M. E. P. (2023). Tomorrowmind. Atria Books.
- 日本語版『これからの生き方 揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』(徳吉陽河 監訳・解説、総合法令出版)
- 徳吉陽河(2023). ポジティブ大全. 総合法令出版
- ※ 本記事は自己理解のための情報であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。