Column — これからの未来
危機のときに、PRISMはどう働くか
ANSWER危機の場面では、5つの力のうち先に必要になるものと、後から効いてくるものが分かれます。初動ではソーシャルコネクトとレジリエンスが、収束期にはプロスペクションとイノベーションが、そして長期の回復ではマタリングが中心になります。順序を知っておくと、いま何をすべきかが決まります。
1. 危機には段階がある
災害、事故、事業の急停止。危機と呼ばれる出来事は種類が違っても、時間の経過にともなう段階はよく似ています。混乱期、対応期、収束期、そして長い回復期です。
それぞれの段階で、必要になる心の働きが変わります。混乱期に未来を描こうとしても手が回りませんし、回復期に初動の緊張感を保ち続けると消耗します。
2. 段階ごとに効く力
| 段階 | 中心になる力 | やること |
|---|---|---|
| 混乱期 | S ソーシャルコネクト | 誰と連絡が取れるかを確かめる。ひとりで判断しない。情報の入口を絞る。 |
| 対応期 | R レジリエンス | 解釈を広げすぎない。範囲を限定して、できることから手をつける。 |
| 収束期 | P プロスペクション I イノベーション | 複数の再建案を並べる。前と同じに戻すのか、別の形にするのかを検討する。 |
| 回復期 | M マタリング | 自分の役割を捉え直す。誰の役に立っているかを見えるようにする。 |
3. 個人の頑張りに還元しない
危機対応でもっとも多い失敗は、個人の粘り強さに依存することです。初動は気力で持ちますが、長期戦になると必ず崩れます。
組織の側でできることは、交代の仕組みをつくること、判断の権限を現場に降ろすこと、そして貢献が本人に返る経路を確保することです。とくに3つ目は見落とされがちですが、長期の回復期に効いてきます。
4. 平時にやっておけること
- 連絡できる相手を確認しておく。関係は、必要になってからではつくれません。
- 回復の手順を決めておく。判断力が落ちているときほど、事前に決めた手順が効きます。
- 複数の未来を持っておく。ひとつの計画しかないと、それが崩れた瞬間に止まります。
危機管理や災害対応の文脈でPRISMを活用する取り組みも進んでいます。関連する記事は、下の外部リンクからご覧いただけます。
関連する取り組み
一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会では、PRISMを危機管理や災害対応に応用する記事を公開しています。
よくある質問
危機のときに5つ全部は無理です。
無理です。だから段階があります。混乱期はソーシャルコネクトだけで構いません。全部を同時に使おうとしないことが、むしろ重要です。
平時との切り替えはどうすればいいですか?
切り替えより、平時のうちに手順を決めておくことが効きます。危機の最中に方針を考えるのは、条件がもっとも悪い状態です。
回復期が長引いています。
回復期に効くのはマタリングです。自分の働きが誰に届いているかが見えなくなると、長期戦は保ちません。仕組みの側を見直してください。
出典・参考文献
- Kellerman, G. R., & Seligman, M. E. P. (2023). Tomorrowmind. Atria Books.
- 日本語版『これからの生き方 揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』(徳吉陽河 監訳・解説、総合法令出版)
- 徳吉陽河(2023). ポジティブ大全. 総合法令出版
- ※ 本記事は自己理解のための情報であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。