Column — これからの仕事
対人援助職の「これからの生き方」 ─ 支える側が消耗しないために
ANSWER医療、看護、介護、教育、相談支援。人を支える仕事には、他の職種にはない消耗の構造があります。感情を使う量が多く、成果が見えにくく、断りにくい。この3つが重なると、本人の意欲とは無関係に燃え尽きが起こります。対処は個人の心構えではなく、構造の側にあります。
1. 支える仕事に特有の3つの負荷
| 負荷 | 内容 |
|---|---|
| 感情の消費 | 相手の状態に合わせて自分の感情を調整し続ける。目に見えない作業だが、確実に消耗する。 |
| 成果の見えにくさ | 回復や成長には時間がかかり、しかも本人の力によるところが大きい。貢献が返ってきにくい。 |
| 断りにくさ | 目の前に困っている人がいると、断ることが罪悪感につながる。結果として量が制御できない。 |
この3つが重なると、責任感の強い人ほど早く消耗します。燃え尽きが「熱心な人」に起こりやすいのは、このためです。
2. マタリングが見えにくい職種である
意外に思われるかもしれませんが、対人援助職はマタリングが下がりやすい職種です。誰の役に立っているかは明らかなのに、それが本人に返ってくる経路が細いからです。
感謝されることはあっても、うまくいかなかった場面のほうが記憶に残ります。また、支援がうまくいったときほど、相手は自分の力で回復したと感じるものです。これは支援として正しい姿ですが、支える側の手応えは薄くなります。
3. 記録が、いちばん効く
この職種でもっとも効果が大きいのは、届いた場面を記録することです。一日の終わりに、自分の関わりが誰かに届いた場面を1つだけ書く。小さくて構いません。
記憶に頼ると、うまくいかなかった場面ばかりが残ります。記録は、この偏りを修正する装置になります。数か月続けると、読み返すこと自体が回復の手段になります。
4. チームで支える
- ケースの振り返りを、責任追及の場にしない。ここが崩れると、困難な事例が共有されなくなります。
- 断る基準を、個人ではなくチームで決める。断りにくさは、個人の意志では解決しません。
- 互いの貢献を言葉にする。「あの対応が効いていた」と具体的に伝える。マタリングは渡し合うと増えます。
- 休む計画を先に入れる。余裕ができたら休む、では永久に休めません。
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→ 心理職・心理カウンセラーの「これからの生き方」・「役割」とは?
よくある質問
燃え尽きは自分が弱いからですか?
違います。燃え尽きは、長く強い負荷に耐え続けた人に起こります。熱心さの結果であって、弱さの結果ではありません。
感情を切り離したほうがいいですか?
切り離すと、支援の質そのものが下がります。目指すのは切り離すことではなく、回復する時間を確保することです。
職場を変えるべきでしょうか?
構造に原因がある場合は有効です。ただし消耗しきった状態での判断は視野が狭くなりやすいので、可能なら休んでから決めるほうが安全です。
出典・参考文献
- Kellerman, G. R., & Seligman, M. E. P. (2023). Tomorrowmind. Atria Books.
- 日本語版『これからの生き方 揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』(徳吉陽河 監訳・解説、総合法令出版)
- 徳吉陽河(2023). ポジティブ大全. 総合法令出版
- ※ 本記事は自己理解のための情報であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。