Column — これからの仕事
AIに任せる仕事、人が引き受ける仕事 ─ 境界はどこにあるのか
ANSWER境界は「難しさ」ではなく「決めることの重さ」で引かれます。AIは答えをつくるのが得意で、人は何を問いとするかを決めるのが仕事になります。高度な作業ほど残るとは限らず、むしろ誰に対して責任を負うかが分かれ目になります。
1. 「難しい仕事は残る」は成り立たない
かつては、単純作業から自動化されると考えられていました。実際に起きたのはもう少し複雑なことです。定型的でも身体を使う作業は残り、専門的でも文章や画像を扱う作業は一気に置き換わりました。難易度ではなく、データとして扱えるかどうかが境目になったからです。
この観点で自分の仕事を見直すと、職業ではなく作業ごとに答えが変わります。同じ職種でも、置き換わる部分と残る部分が混在しています。だから「この職業は安全か」という問いは、そもそも答えの出ない形をしています。
2. 残るのは「決める」ことに関わる部分
いま人の側に残っているのは、次の3つに関わる作業です。
| 領域 | 内容 |
|---|---|
| 問いを立てる | 何が問題なのかを定義する。誰のために解くのかを決める。ここが違うと、どれだけ良い答えも役に立たない。 |
| 責任を負う | 選択の結果を引き受ける。組織でも社会でも、責任の主体は人であることが前提になっている。 |
| 関係をつくる | 相手の状況を理解し、信頼を立ち上げる。ここは効率化の対象になりにくい。 |
『これからの生き方』が示すPRISMの5つの力は、この3つとほぼ重なっています。未来を描き、立ち直り、創造し、つながり、意味を感じる。どれも、答えを速く出すこととは別の軸にあります。
3. 「AIを使えること」は差にならなくなる
ツールを使えること自体は、いずれ前提になります。表計算ソフトが使えることが強みだった時期があったのと同じです。
差がつくのは、何を任せ、何を自分で判断するかを決められるかどうかです。全部任せると判断力が育たず、全部自分でやると時間が足りません。この配分を状況に応じて変えられる人が、結果的に速く進みます。
配分を決めるには、自分の仕事の目的が見えている必要があります。ここでも、問いを立てる力が土台になります。
4. 明日からできること
- 職務を洗い出す。職業名ではなく、実際にやっている作業をリストにする。
- 印をつける。それぞれに「置き換わりやすい/残りやすい」を書く。基準は、正解が決まっているか、人の状況を理解する必要があるか。
- 会議で一度だけ聞く。「そもそも何を決めたいのか」。問いを立てる練習になります。
- ひとつ触ってみる。新しいツールを実際に使う。理解する必要はなく、触れた経験が次の変化への構えを変えます。
よくある質問
AIに強い分野に転職すべきですか?
分野を移すより、いまの仕事のなかで問いを立てる側に回るほうが確実です。分野は変わりますが、その力は持ち運べます。
創造的な仕事なら安全ですか?
創造性の定型的な部分は、すでに一部が自動化されています。安全なのは領域ではなく、目的を定義し責任を負う位置です。
何を学べばいいですか?
ツールの操作は必要になったときで間に合います。古くならないのは、問いを立てる力と人と信頼を築く力です。
出典・参考文献
- Kellerman, G. R., & Seligman, M. E. P. (2023). Tomorrowmind. Atria Books.
- 日本語版『これからの生き方 揺らぐ世界で何度でも立ち直る力』(徳吉陽河 監訳・解説、総合法令出版)
- 徳吉陽河(2023). ポジティブ大全. 総合法令出版
- ※ 本記事は自己理解のための情報であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。